「金魚すくいって、こんなに難しいのですね……」


菫は穴の空いたポイを見て唸った。


「お嬢ちゃん、もう1回やってくかい?」


「もちろんですわ!」


菫は新しいポイを持ち、構える。

チャンスは2回。菫は赤い金魚を狙ってポイで掬ったが、穴が開いてしまった。


「うーん……厳しいですわ……」


ルナは、意外と負けず嫌いだという菫の意外な一面を垣間見たような気がした。


「それっ!」


菫の頑張り空しく、2個目のポイにも穴が開いた。


「残念ですわ……」


しょんぼりする菫を見て、ルナはどうにかしてあげたい気持ちになった。


「おじさん、僕も!」


「おう!」


お金を払い、ルナはポイを受け取る。


「藤堂さん、この赤い金魚だよね?」


「ええ、そうですけど……」


菫が頷いたのを確かめて、ヨルは金魚の動きに集中した。


(それっ!)


勢いよくポイで掬い、受け皿に金魚を入れる。


「おお!やるね兄ちゃん!」


「すごいですわ、ルナ君!」


「えへへ……」


ルナは捕った金魚を袋に入れてもらうと、菫に差し出した。


「はい、これ」


「え、いいんですの?」


「もちろん」


「……ありがとう、ルナ君。大事にしますわ。」


菫は満面の笑みで金魚を受け取った。