その優しい言葉に私は何も言えなかった。
ただ、軽く口角をあげて見せた。

長谷部さんが、車で文月家へ戻って行くのを見届けてから、私は1人、用意してもらった部屋へと足を踏み入れた。

「わぁ、」

外観もびっくりするくらい素敵で豪華なのに、部屋の中はもっと凄い。

ここで、今日から暮らすんだ……。

明日は新学期、初めは学校も辞めようかと思ったけど、今からすぐにいろいろ変えるのは大変ということもあって、継続して通うことになった。

私は、リビングの壁にもたれかかって、そのままずるずると崩れた。


なんだろう…勿体ないくらい贅沢な部屋なのに、何もない。凌さんとの思い出も…何も…

ただ、現実を突きつけているかのように…


"空っぽだった……"