でも、凌さんの腕の中は温かくて、本当に安心出来る場所…。

「ごめんなさい、涙で、凌さんの服濡れちゃう…」

ゴシゴシと手の甲で乱暴に涙を拭うと、凌さんに止められた。

「腫れるぞ。」

そう言って、タオルで優しくぽんぽんとたたくように涙を拭いてくれた。

ドックン、ドックン…凌さんに聞こえちゃうんじゃないかってぐらい大きく鳴り響く心臓は、…私をおかしくする。

だって、聖良くんとか、九条さんとか、他の人といる時はこんなにふうにならないから…だから、…分かんなくなるの。

「俺は佑香が落ち着くまでそばに居るから。服が濡れたって気にしない。」

「は、いっ、ありがとうございます。」

きゅーぅぅ、と胸が締め付けられる。