「男性の方ですか?」

「はい。」

ただそう答えただけなのに長谷部さんは苦笑いをこぼした。
そして、独り言を…

「凌様が知ったら、嫉妬で凄いだろうな…」

「ん?どういうことですか?」

「いえ、なんでもないです。楽しんで行ってらっしゃいませ。」

「はい!行ってきます。」

「あ、花衣様。」

「はいっ!」

その場を抜けて玄関へ向かおうとした私を長谷部さんは引き止めた。

「今日、凌様はいないですが、帰ってきた時、誰と、行ったのかは凌様に言わない方がいいですよ。」

「?は、はい?」

なんでだろう、なんで凌さんに言っちゃいけないんだろう。楽しかったこと、たくさん話したいのに…。

分からないまま、曖昧に返事をして、私は廊下を抜けた。