父と母は仲が良くはなく、父は殆ど家には寄り付かない。しかし未だに離婚はしていない。
それが小さな時から不思議だった。

冷めきった夫婦関係。どこかうすら寒い空気が流れる実家で、父は年に数回しか帰って来ない。

帰って来ても殆ど話はしないからすっかりと疎遠になってしまった。 それでも父が他所に女を作っているのは知っている。


母の電話を切ったら、ドッと疲れが出た。 だから話すのは嫌なのだ。
今日の北斗さんの俺と付き合ってくれないだろうかもきっと何か裏があるに違いない。

母にすっかり洗脳され切った私は、こんなにも意気地がなく陰気な女だ。 そもそもそんな女に北斗さんが似合うわけがない。


ここ数ヵ月の奇跡のような出来事の中で、何を浮かれ切ってしまっていたのだろうか。

冷静に考えれば、私のような女を北斗さんが選んでくれる訳ないって分かり切っていた。 母に釘を刺されなくとも、そんな事は分かり切っていた事実だ。