けれど、真樹はゆるゆると首を振った。

「捨てられないよ。たとえ、アンタにとってあれが〝チョコのお返し〟でしかなかったとしても」

「そんなワケねえだろ」

「……え?」

 (うな)るように岡原が言ったので、真樹は一瞬反応が遅れた。

(それって、どっちの意味で解釈したらいいの?)

 〝チョコのお返し〟ですらないという意味だろうか? それとも――。

(あれはウソで、ホントは別の意味があったとか?)

「……ねえ岡原。それってどういう意味?」

 真樹がそう訊ねた時――。

二〇一五(にせんじゅうご)年度卒業生のみなさん。間もなく同窓会が始まりますので、体育館に集まって下さい。繰り返します――』

 ピンポンパンポン♪ というおなじみの音の後、若いけれど野太い男性の声で集合の放送が流れた。

「――悪りぃ、真樹。そのハナシ、同窓会が終わった後でもいいか?」

「えっ? うん、いいけど」

「お前の質問の答え、多分俺が今日伝えたいこととおんなじだと思うからさ」

「え……。分かった」

 真樹は戸惑いながらも頷く。――これは、もしかして!?

「――真樹っ、体育館行くよ~!」

「将吾、行こうぜ~!」

 二人の友達グループが、それぞれ呼びに来た。真樹と岡原を二人きりにするために、知らないうちに離れていたらしい。

「……真樹、じゃあまた後で」

「あ、うん」

 二人は一旦そこで別れ、友人グループと一緒に体育館へ向かった。

「――ねえねえ、真樹! 相変わらず、岡原といい感じだったね」

「ええっ!? そうかなぁ?」

 美雪にはやし立てられ、真樹は首を捻る。
 彼と交わした会話といえば、中学時代とあまり変わらないケンカのようなやり取りや、真樹の本のことや、あとはほとんど世間話くらいのものだったと思うのだけれど……。

(あと、あたしのリップを褒めてもらったり……とか)

 そこ()()を見れば、「いい感じ」に見えないこともないかも……と真樹はこっそり両手で頬を押さえた。