――バスが遅れて来ていたので、十分おきに来る電車も一本遅らせ、真樹が母校に到着したのは十一時四十分過ぎだった。
 まだ開始時刻には少し早いけれど、校庭や校舎前にはすでに同級生の大半が集まり、そこここで再会を喜び合っている。

「――あ、真樹! こっちこっち!」

 その一画から、真樹の幼なじみで親友の倉田(くらた)美雪(みゆき)が手を振ってきた。

「美雪ー、やっほー! つい一週間ぶり?」

「あははっ、そうだねー。先週の火曜日、原宿(はらじゅく)まで一緒に遊びに行ったっけ」

 美雪は私立の女子高校を卒業後、大学へは進まずにフリーターになった。今はバイトを三つほどかけ持ちしているらしい。
 真樹と美雪、そしてあと四人の友達との女子六人グループは今でも仲がよく、連絡を取り合っている。たまに休みが合えば、一緒に遊びにいったりもする。

「――そういえばさ、真樹。岡原も今日来るんだよね?」

 他の友達とも合流した後、美雪が訊ねてきた。ちなみに、真樹と岡原とのあれこれは友達みんなが知っている。

「うん、来るって。案内状が来た日にかかってきてた電話で、『絶対(ぜってー)行く』って言ってたから」

「それはあたしもこないだ聞いたけどさぁ。そのあと『行けなくなった』って連絡はなかったの?」

 二人で遊びに行ってから一週間が経っているので、その間に岡原からまた連絡があったのではと、美雪は訊きたいようだけれど。

「ううん、ないよ。岡原と電話で話したの、かかってきた翌日にあたしから返事した時が最後だもん」

 あれから何の連絡もないということは、彼は今日間違いなく来るということだろうと真樹は解釈したのだ。

「……えっ、ナニ? 真樹と岡原って、いつの間に連絡取り合うような仲になったの?」

 別の友達が、鳩が豆鉄砲(まめでっぽ)くらったような顔で、興味津々に訊ねた。