「――ゴメン、岡原! あたし、そろそろ切るね。ゴハン前にちょっと仕事したいし」

『おう、そっか。分かった。じゃあな』

「うん、じゃあ」と言って、真樹は終話ボタンをタップした。そのままカバーを閉じ、充電ケーブルを差し込む。

 ちなみに、彼女が今いるのは寝室兼書斎の洋間である。食事の時はダイニングテーブルを使うけれど、それ以外の時間の大半はここで過ごしている。

 ベッドとクローゼット、本棚が置かれた部屋の中央に(ちん)()ましましている、折りたたみ式の座卓の上のノートパソコンを再び開き、USBに保存してあるプロットのファイルを真樹は開いた。今日ボツをくらった新刊のものである。

 これは過去に既刊が三作出ているシリーズもので、主人公の青年とヒロインの(よう)()とのつかず離れずのビミョーな関係がウケているのだけれど。

「コレに恋愛要素を絡めろ、ってことか」

 真樹は座卓に頬杖をつき、呟いた。

 この二人に恋愛的な展開をもたらすのは、あながち不可能ではないかもしれない。
 よくありがちな〝()(るい)(こん)(いん)(たん)〟っぽくはなるだろうけれど、男女なのだから不自然ではないかも、と真樹は思った。

「まずは、どっちの片想いからにするか、だけど……」

 とりあえず、書くだけ書いてみよう。――真樹はキーボードに両手を置き、少しずつ内容の修正を始めた――。