川辺店長は真樹のだんだんフェードアウトしていく説明を聞き、「分かった」と頷く。

「そういうことなら、遠慮しないで休みを取りなさい。同窓会で昔の友達に会うなんて、立派な理由じゃないか」

「えっ、いいんですか!?」

 真樹は驚きと嬉しさで瞬いた。「ダメだ」とか、「そんな理由で休まれても困る」とか言われたらどうしようかとヒヤヒヤしていたのだ。

「うん。当日のシフト調整は僕がしておくから、君は心配しなくていい。有給扱いにしてほしいなら、届け()して帰ってね」

「はいっ! ありがとうございます!」

「届出の理由は〝私用のため〟って書いてくれたらいいからね」

「はい」

 真樹は店長から有給休暇の申請用紙を一枚もらい、二十九日に有休を取る旨と、その理由をボールペンで書いた。

『私用(同窓会出席)のため』

「――店長、書けました! これでいいんですか?」

 真樹が用紙を提出すると、店長はそれをしっかりと受け取り、頷いた。

「うん、オーケーだ。確かに受理したよ。あと、当日の君の代打は僕の方で手配しておくから。同窓会、楽しんでおいで」

「ありがとうございます、店長。じゃあまた明日も頑張ります。お先に失礼します!」

「ああ、お疲れさま。明日もよろしく」

 店長にペコッと会釈し、タイムカードを押して真樹は事務所を出た。そのままロッカールームで制服のエプロンを外し、グレーの七分袖シャツの上からパーカーを羽織って()()につく。

「二十九日、休み取れてよかった」

 真樹はホッとして、歩きながら思いっきり伸びをした。
 しかも有給にしてもらえた。〝至れり尽くせり〟というヤツだ。

「とりあえず、岡原に知らせといた方がいいかな」