女性は目を疑うほど美人だった。ベージュのトレンチコートを着てるけれど、スタイルの良さが遠目からでもわかる。大人の綺麗なお姉さんって感じの雰囲気で、年齢は二十代後半くらいに見えた。

「え、零士くん? こんなところでどうしたの?」

「今からコインランドリーに行くところです。綾子さんは買い物ですか? 仕事は?」

「今日は休み。天気がいいし、散歩がてらスーパー巡りをしてたの。零士くんの家って新川じゃなかったっけ?」

「寮から出て根津のシェアハウスに住むって前に話したじゃないですか」

「そうだっけ? 飲んでたから忘れちゃった」

綾子さんと呼ばれている女性と零士はかなり親しげだった。

零士は話しかければ答えるけれど、自分から寄っていくことはまずないし、こんなにも誰かに心を許してる姿を見たのは初めてだ。

零士って、こんなに嬉しそうな顔をするやつだったのか?

いつも省エネ思考で静かなくせに、今は別人みたいにご機嫌だ。

手懐けられているのか、それとも勝手に懐いたのか、ふたりの関係は端から見ただけではわからない。でも友達以上の親密さがあることは確かだった。