「なんで零士は彼女つくんねーの?」

「逆に作らなきゃダメなの?」

「ダメなわけじゃないけど。あ、わかった! お前、女にトラウマがあるんだろ! 昔、ひどいフラれ方をしたとか浮気されて裏切られたとか」

「そうだね。恋愛にトラウマはあるかもね」

こっちは真面目に聞いてるのに、零士は俺の話を流すような言い方だった。

零士はなにかと秘密主義だ。俺は嘘が嫌いだし、隠し事もしない主義だし、バレて困ることだってやらない。

だけど零士はそもそも人のことをあまり信用してないように見える。


「鈴村は運命とか信じてる?」

電線にとまっていた2匹の鳥を見ながら、零士がぽつりと呟いた。

「なんだよ、急に」

「運命の人に出逢うと林檎の匂いがするらしいよ」

「はは、なんだそれ。そんなの聞いたことねーわ」

「そうだろうね。こういう話って必要としてる人の耳に入るようになってると思うし」

「つまりアレか。俺には貞操概念(ていそうかいねん) がないって意味?」

「別にそこまでは言ってない」

でも俺にはそんなふうに聞こえた。