「純粋ってなんだよ。俺の経験人数知ってんのか」

「純血と純粋は違うよ。何人と寝てようと汚れない人はずっと心が綺麗だよ」

きっと零士は俺以上にたくさんの人と交流をしてきた。その中で汚さも綺麗さも見てきたような口振りだった。

「ごめん。これからも同じ家に住むのにやりづらくさせちゃって……」

「そんなことな……いや、違う。接しづらさはたしかにある」

俺は誤魔化すことなく、自分の気持ちを正直に話した。

「俺はずっとお前になりたいと思ってたんだよ。同時に勝ちたいとも思ってた。だから零士に欠点があったらいいって。ひとつぐらい誰にも言えないようなことが……」

「ゲイなのが欠点?」

「…………」

俺はあの時、一瞬だけ零士は〝普通の人〟じゃなかったんだと思った。

普通がなんなのかもよくわかってないくせに、自分の価値観だけでこいつのことを普通ではないと思ってしまった。

「引くほど最低だし、立派な差別だし、自分の浅はかな考えに反吐(へど)が出るけど、俺の中に男が男を好きになるっていう考えがなかったんだ」

だから零士になにも言えなかった。こそこそと和久井さんに相談する方法しか思いつかなかった。