「和久井さんとの話は終わったの?」

リビングに向かうと、零士が洋画を見ていた。この前金曜ロードショーでやっていたロードムービーだ。

こっちは気づかれないように和久井さんに相談しに行ったというのに、それすらも零士にはお見通しのようだ。


「なんで……なんで俺だけに隠そうとしてたんだよ。他のやつらには前から話してたくせに。俺が言いふらすとでも思ってたのかよ」

「違うよ」

「じゃあ、なんだ!」

自分でもビックリするほどムキになっていた。

零士が誰に話そうと関係ないことなのに、その選択肢の中に自分がいなかったことがどうしても許せない。

零士の視線がテレビから外れた。俺が放っている刺々しい空気とは真逆に、友情を確め合うような感動的なシーンが流れている。

「鈴村って俺からすればすごく純粋に見えるから」

「え、は? 純粋って俺が?」

「そういう人って必要以上に相手の気持ちを察しようとするでしょ。だから俺のことで余計な気は使わせたくなかったし、鈴村の思考を(わずら)わせることも嫌だったから」

まさかこんな答えが返ってくるなんて思ってなかった。