「……和久井さんは聞いた時、どんな反応したんですか?」

「どんなって、ただそっかって言ったくらいだよ」

「驚かなかったんすか?」

「実は俺の従兄弟が零士と同じなんだよね。それで【バル】っていう店を経営してるから、もしよかったら行ってみればって紹介したら喜んでたよ」

「店ですか?」

「LGBTの人が集まるバーだよ。あ、今はLGBTQか」

「Q?」

「クエスチョニングのQ。性自認と性的指向が決まっていない人もいるんだよ」

和久井さんは俺と違ってかなり詳しかった。おそらく身内にいたこともあって、今まで聞いたり調べたりする機会がたくさんあったんだろう。

なんだか今まで自分が狭い世界で生きてきたことを見せつけられているような気持ちになった。

「陽汰は零士のことを知ってどう思ったんだよ?」

「俺は……」

わかりやすく言葉に詰まってしまった。

「ぶっちゃけ零士は陽汰にだけはバレない限り言わないって言ってたんだよ。もしかしてお前から勘づいた……ってわけじゃないよな、その顔は」

じゃあ、なんで打ち明けたんだろうと、和久井さんは首を傾げていた。

自分の感情と折り合いがつかないくせに、俺だけには黙っているつもりでいた零士に腹がたっていた。

なにが子供っぽいことを言うつもりはないだ。

十分ガキじゃねーか。