笑顔の桐人君に居た堪れなくなってプイッと顔を背けると、私の腰に左腕に回してきた。
そのせいで私は桐人君の腕の中にすっぽり閉じ込められた。

「ひゃあ!離して!」

「ヤダ」

耳元には楽しそうな声。
私は全然楽しくない。
だって、

「昨日お風呂に入ってない!」

身体中、汗でベタベタだ。
女としてこんな状況で抱き締められたくない。

「仕方ないな」

なんとか離してもらったが、

「だから俺が身体を拭いてあげるよ」

今度は私の胸元の釦に向かって手が伸びてきた。

「ひゃあ!ダメです!」

反射的に両腕で自分を抱き締めた。

「残念」

唇を尖らせた桐人君を見ながら、私は動揺と熱のせいで肩で息をする。
桐人君は口角を楽しげに上げた。

「興奮すると熱が上がるよ?」

誰のせいだとキッと桐人君を睨む。

「睨んだ顔すら可愛いね」

桐人君は笑顔で歯が浮きそうな台詞をサラッと出す。