「自分で食べますから!」

「残念」

桐人君は拗ねた顔でそう言うと私を起き上がらせ、座らせた私の膝の上にお粥の乗ったトレーを置いて、ベッドの縁に腰掛けた。

「桐人君は食べないんですか?」

「俺は君が電話に出ずに寝てる間に食べたからね」

その言葉に時計を見たら、もう二十一時を回っていた。

「お仕事あったのに、ごめんなさい……」

「美優の口から聞きたいのは謝罪じゃないよ」

目を優しい形にしながら右頬を優しく撫でられて、胸の奥がこそばゆくなる。

「あ、ありがとうございます……」

「どういたしまして。いっぱい食べてね」

お礼を返すと桐人君は満足そうに微笑んだ。

私は桐人君のお手製のお粥を口に運ぶ。
卵と小葱のあっさり味。

「美味しいです……」

「良かった。早く元気になってね」

迎えに来てくれてから桐人君はずっと近い距離に居る。

そのせいで心臓がずっと忙しない。

「元気になってくれないとキスの続きが出来ないから」

甘い桐人君に益々心拍数が上がって、頭がクラクラした。