「美優」

優しい声色で名前を呼ばれ、胸が痛いほど高鳴った。

貴方に名前を呼ばれるだけで、私の心臓は暴走する。


「俺はもう遠慮はしないし、あの時みたいに引きたくない」

あの時っていつのこと?


「美優、俺のこと好きになって?」

桐人君が甘く囁く。

益々処理は追い付かない。

そんな私に桐人君は余裕そうにクスリと笑う。


「今は熱もあるし、まずは帰ろう。さぁ乗って」




気が付いたらマンションのベッドの上。
どうやら私は車の中で眠ってしまったらしいが、桐人君が私のブラウスの釦に手を掛けているこの状況って……?


「あとちょっと寝ててよ。そうしたら着替えさせられたのに」

「っ!?!?」

私を見下ろしながらちぇっと舌打ちすると、悪戯をする子供みたいな笑みを浮かべる桐人君。
私は声にならない声を出しながらガバッと起き上がると頭がくらっとして倒れそうになった。
そんな私を桐人君が腕を回して支えてくれた。