桐人君の車が彼の家の前に停まる。
待っていてと言われたので車で待った。
十分程で桐人君は大きなトランクを転がしながら戻ってきた。

ナビにマンションの住所を入れると二人で向かうことになった。

お母さんのためとはいえ、こんな急展開になるとは思ってもいなかった。

演技をしなくて良くはなったが、これから待ち受ける事態は試練にしか見えない。


マンションは実家から車で十五分とそう遠くはない場所だった。
駅前の三十階建ての高層マンション。
部屋は五階。
四LDK。
部屋は沢山あった。
洗濯機やテレビなどの家電や、テーブルやソファなどの家具もちゃんとある。
今すぐに住める状態だ。

だがそれよりもどうするかだ。
リビングの奥の寝室だ。
キングサイズではあるが、ベッドが一つしかないのだ。

母の行動に頭痛に襲われる。

私達は一つのベッドの前で固まっていた。