「……あの、一つ訊いていいですか?」

こんな展開になり、一つの不安が生まれて、私は確認することにした。

「何?」

前を見て運転する桐人君の横顔を窺いながら訊く。

「桐人君には、彼女、いますか?」

「いないよ」

それを聞くと少し安心した。

「彼女が出来たら絶対言って下さい。私のせいで駄目になってしまったら申し訳なさすぎるので!」

「分かったけど、君は?」

「え?」

「各務君は大丈夫か?」

そう言われて思い出した。

嘘をついたことを。

「私の方は全然大丈夫ですから!」

だって諒ちゃんは幼馴染なだけだもん。

「明日の君の予定は?」

「私は大学です。桐人君は?」

「仕事だよ。平日仕事で、土曜日はたまに休みけど大抵仕事、日曜日は休みだ」

一緒に住むことになるからだろう、ルーティンを教えてくれた。

「まずは僕の荷物を取りに行くよ」

「わ、分かりました」