母の胸には痛々しい傷がある。
心臓の手術の痕だ。
母は手術しないと二十歳まで生きられないと言われていたらしい。
手術も成功するのは五〇パーセントの確率だったらしい。
そんな手術にも打ち勝って、母は父と結婚して私を産んだ。
本当はもっと子供が欲しかったらしいが、心臓のために諦めたと聞いている。

神様、残酷すぎる。
まだ母は五十歳にもなっていないのに……。

それでも目の前の母は、いつもと変わりのない笑顔を私に向けてくれている。

ずっと苦しいのをバレないように我慢していたなんて……。


「晩ご飯まで部屋に居るね」

「分かったわ」

私は涙が出そうになって、広間から出た。


母が行きたいと言った所に全部連れて行こう。

全部やりたいことを叶えてあげよう……