「諒ちゃん!?待って!」

諒ちゃんを追い掛けようとしたら、繋がっている手を引き寄せられた。

ポスンと桐人君の胸板に頭が当たると、桐人君の両腕が私を逃がさないというように巻き付いてきた。

濃くなった桐人君の香りと密着した身体に鼓動が速くなる。

「は、離して!」

ドキドキが桐人君にバレそうで訴えた。

「俺は君との結婚を本当にしたいと伝えただろ」

桐人君が私とは正反対の冷静な声で言った。

「桐人君はご両親のためでしょ!?桐人君もお母さんの嘘を知ってたんでしょ!?」

冷静になれない私は話す気がなかったことを思わず叫んでしまう。

「嘘は俺も知らなかったし、俺は自分の意思で君と居たいんだ」

嘘はもうこの際どうでも良い。
もっと肝心なことがあるもの。

「彼女がいるじゃないですか!」

「そもそもその彼女って誰」

桐人君の返答に唖然となる。

桐人君は惚けてまで会社のために私と結婚したいの!?

「青柳先輩ですよ!」

「アイツかよ」とボソリと聞こえた後、はぁと重い溜め息が聞こえてきた。