「きっと君の事が気がかりで、最期に安心したいのだろう」

耳元に聞こえた声に震えまで起きそうだ。
私を落ち着かせようとしてか、背中を優しく摩ってくれる桐人君。


「もし各務が君と結婚する意思があるなら彼に任せようと思ったが、あの様子だと無理だろう」

意味深な言葉を出す桐人君が気になって私は桐人君へと顔を上げる。

「無理って、どういうことですか?」

「君の想いは尊重したいが、各務はお勧め出来ない。僕なら演じられる」

「演じられるって……?」

「君のお母様が安心して天国にいく日まで、君の婚約者を」

天国のワードに現実味。

本当なの?
お母さん、死んじゃうの……?

そう思うと涙が込み上げてきた。

するとまた桐人君が背中を摩ってくれた。
その優しさに涙が溢れ出てしまう。

「どうして、お母さんは、私に、言ってくれなかったの……?」

「君だから言えなかったんだよ。娘には秘密にしてくれって。どうか君をお願いしますって僕に頭を下げに来た」