真剣な顔で言われて、何か嫌な予感がした。

確かに前は口でからかうだけだった。
最近は結婚式場のパンフレットを持ってきたりと、リアルな行動をしていたなと。


「だ、誰が急かして……」

「君のお母様だ」

「ど、どうしてですか……?」

問い質すと言い淀む桐人君。

その様子が私に不安を煽る。


「……君のお母様は、先が短いんだ」


不安は的中してしまった。

目の前が真っ暗になった。

言葉が出ない。

ふらっと立ち眩みが襲う。
「危ない!」と桐人君が私の身体を支えてくれた。


母は小さい頃から心臓が弱かった。
手術もした程に。
母は私よりも身体が弱くて、人生の中で走ったこともない。

いつか親が旅立つ日を見送ることになるのは分かっていた。
でもこんな早くにくるとは思わない。