「私、各務諒さんとお付き合いしていますっ!だから親同士が勝手に決めた結婚話は忘れましょうっ!」

期待した自分に心の中で苛立っていたそこに、追い討ちの一言。

各務のことは美優から昔から聞かされていた。
いじめっ子から自分を守ってくれた男の子だと。

美優が突然こんな話をしたのは、きっとお互いの両親のせいだろう。
昔から両親達は俺達の結婚を推していたから。

聞きたくなかった。
でもこれが現実か。

各務に会わせて欲しいとお願いしたのは、現実を受け入れるためと美優の母親の願いを託すため。


また今日も自宅に入った時にタイミングよく携帯が鳴った。
美優だった。
仕事が終わるタイミングを待っていたのだろう。

次の日また美優と会うことにした。
だって時間が限られているから急ぎたい。


「というわけで、俺と美優と付き合ってるし、それに美優は俺の専属秘書になるし」

ウェーブのかかった茶髪に整った顔、自信がありそうな微笑、これが美優が好きになった男。
横に並んで座る二人と各務の言葉に嫉妬が渦巻くが自分を抑える。