美優は小さい頃から優しい女の子だった。
美優が飼っていた犬が亡くなった時は一ヶ月は泣いていた。
あの状態を見ていた俺は母親の言葉に心から納得したが、最後のお願いにどうすれば良いか分からず、答えられなかった。


数日頭を悩ませた。
やはり娘の美優は知るべきだと思った。
丁度自宅の自分の部屋に入った時だった。
携帯が鳴った。
美優からの着信。
慌てて携帯をとると、耳には心地好い声が届いて鼓動が速さを増した。
話がしたいから会って欲しいとのお願いだった。
六年以上まともに会話をしていない美優の話はとてつもなく気になるが、丁度良かった。

次の日、早速会う約束をした。
だって美優の母親がいつ旅立つか分からないから早めが良い。

約束したホテルのラウンジ、すぐに美優を見つけた。
白の清楚なワンピースに肩まである綺麗な髪、化粧が必要ないくらいの長い睫毛に魅力的な可愛らしい唇。
美優は相変わらず可憐だった。


「桐人君、お久しぶりです。私も今着いたばかりです。お話したいこととは、まず各務グループに就職することになりました」

美優の話には少し期待を抱いていた。