「それならうちの美優はダメかしら?」

「ですが、彼女が望みませんよ」

「でも……」

深刻な顔で目だけ下を見ながら、退く気配を見せずに渋る様子の彼女。

どうしたいんだ?
俺に何故頷いて欲しいんだ?

「何故そんなに話を急にされるのです?」

気になって直球で訊ねると、彼女は目線を彷徨わせた。
彼女の周りに悲壮感が漂っているようにしか見えなくて俺は嫌な予感がした。
ふぅと小さく吐く息が聞こえると彼女は口を開いた。

「私……実は、先が短いの……」

どんな話が出るのだろうと身構えていたのに、あまりの内容にフリーズしてしまった。
肩を小さく震わせ、目を伏せる彼女に言葉が出てこない。

「美優にはまだ話していない。きっとあの子には言わない。だから桐人君も秘密にして」

秘密の単語に疑問を感じ、口を開いた。

「どうして、僕には話したんですか……?」

「あの子は優しい子だから、きっと泣いてしまう。でもそんなの見たくないじゃない。笑ってて欲しいもの……。だから桐人君に美優をお願いしたいの」