「こーたろ?どうしちゃったの?」
俺の頬を両手で包んで、パンを捻るみたいに左右に伸ばす李衣。
真ん丸の大きな瞳が俺を捕らえている。
…まつ毛長い。
「別に、何も無いけど」
見つめ合うのが急に恥ずかしくなり、ぱっと目を逸らす。
……いやいや、李衣相手に何を動揺してんだ俺。
1つ歳下、幼なじみ。
女の子というよりは、ペットみたいなもの。
「李衣に彼氏居るの、いやだった?」
……ああ嫌だ。
………そう、浮かんだ言葉を押さえ込む。
いやいやいやいや!
なんで李衣に彼氏が居るのが嫌なんだよ!
バカか俺、どうかしちゃってる。
思春期なのか?そうなのか?周りの異性全員を意識しちゃうお年頃?
……そんなわけない。
李衣にしてやられたみたいで悔しい。
何も言い返せずに黙り込む俺に、李衣は
「やだ、こーたろ可愛い」
小首を傾げて微笑んだ。
李衣の小さい顔が近づいてくる。
近づいて…え?近づいてくる?