「彼氏が居るとか聞いたことないけどな」
「居たよ?」
「へ…?」
今なんて言った?
あの李衣に、彼氏?
いつもこーたろこーたろって、後をついて回ってくる李衣。
大好きーとか、こーたろしか居ないーとか、調子のいい言葉を並べて。
俺が居ないと駄目みたいにしていたくせに。
「聞いてないけど…」
知らない間に彼氏が居ただなんて。
流石にむっとしてしまう。
妹みたいなもんだ、俺が李衣のことで知らないことがあるだなんて……
なんだか悔しい。
「李衣重いから、振られちゃったけどね」
あははっと誤魔化すように笑う李衣。
……なんだその男、見る目無いな。
「…こーたろ、顔、怖いよ?」
怒ってるの?と近付いていつもみたいに戯けて煽ってくる李衣。
いつもより遠く感じる。
仲のいい幼なじみ。
知らない李衣が居るだなんて、考えてもみなかった。
それがこんなに、胸を締め付けるだなんて…
俺、おばさん達を馬鹿にできないくらいに李衣に依存してるのか…?