「こんなに可愛いMy love(愛しい人)のことを傷付けて……。海に沈む覚悟はできているのかしら?」

凛とした綺麗なソプラノの声に、ジャックの意識が少しずつはっきりしていく。ジャックを抱き止めていたのは、看守の服を着たつり目の女性だった。黒い髪はベリーショートで、顔にはそばかすがある。しかし、その顔立ちは整っていると言えるだろう。

「ア、アリシア……」

女性看守であるアリシア・クローネの名前をジャックが呼ぶと、「気が付いたのね」とアリシアは笑う。しかし、その顔は陽だまりの下で微笑む女神というよりは、悪魔が見せる狂気的な笑顔と言った方が正しい。

「私の部屋で手当てしてあげるわ。さあ、おいで」

アリシアに支えられ、ジャックはアリシアの自室に連れて行かれる。この監獄では、看守一人につき一部屋が与えられ、家具なども揃えられている。

ベッドに座らされ、ジャックはアリシアの手当てを受けることになった。傷口を消毒され、包帯を巻かれていく。