雪森くんがニコ、とわざとらしく笑うと
昴くんが「は?」と低い声を出した。
「そいつは送ってやんなくてもいいから。
だって地味女だよ?襲われるわけねぇし。
天の時間がもったいねぇよ」
「あのさ、嫌々だったら言わねぇから。
俺がしたいからするんだけど?
もったいねぇかは自分で決めるから」
「行こ、千花ちゃん」と言って私に視線を送る雪森くん。
え…昴くんとの約束は、いいのかな?
雪森くんに右の手首を掴まれて、そのまま引っ張られる。
「わ、とと…っ」
いきなりだったからバランスを崩してよろける私の体を
後ろから誰かが抱き寄せるようにして支えてくれた。
「あ、ありが…」
助けてくれたのは海ちゃんだと思って顔を上げたら。
「天、
やっぱコイツ俺が送るわ。
鈍臭くて見てらんねぇし。
あと家隣だから、手間でもねぇしな」