〈空!ここにいたの〜?〉
透き通った声にドキッとして、空先輩から目を逸らした。好きをやめたはずなのに、見つめてしまった。好きをやめなきゃいけない恋なのに…胸がまだ高鳴って苦しい。だけどそのドキドキを止められる。
〈あ!花ちゃんだぁ、私空の彼女のサラです!〉
あぁ胸が、痛い。
煇先輩の横に座るサラさん。どうして空先輩の横座らないのかなと思うとカウンター席のような場所に座ってた私たちの周りに空いてる椅子は私の横が一つと、煇先輩の横にいくつか並んでいた。
そして空先輩は私の横に座ってるのだ。
本当に訳がわからない。左側がむず痒くて空先輩がいる方向に顔を向けるのがなんかやだ…。
ふわふわのロングの茶髪によく似合う可愛らしい顔をしているサラさん。ペコリと会釈すると
〈いつも空から花ちゃんの話を聞いてたの〜!すごくかわいい妹みたいな後輩がいるって!よろしくね?〉
と私と違ってスラッとした手を差し出してきた。
爪先はトップコートで綺麗に整えられていて、指は白くて長い…
「は、はい…よろしくお願いします」
精一杯笑顔を作って、サラさんと握手をした。強く握ると壊れてしまいそうな手で空先輩とも繋いだ事のある手だと思うと少し気分が重い。
そしてこだまする妹みたいな後輩という単語。空先輩は初めから私のことなんて恋愛対象に入ってなかった。
ずっとずっとその言葉がグルグルしてせっかく煇先輩が買ってくれたオムライスも味がしない。