あれから1ヶ月ぐらい私は空先輩と話していない。私が露骨に避けまくっててついには空先輩からも避けられるようになった。


目も合わなくなって、空先輩の隣には可愛い女の人がいてそれを見るたび胸が締め付けられた。

わかってる、自分が自分の首を締めてるようなことをしてるのも。


空先輩とは話さなくなったけど、煇先輩とはよく話すようになった。お昼休みには人がよく混む食堂でご飯を煇先輩と食べていると、たまたま空いていた隣の席がシルバーのピアスをつけたあの日見つめていたあの横顔の持ち主によって埋められた。

匂いだって覚えている。煇先輩と違って鼻の奥を優しく付くような男の人の香水の匂い。

ピアスはゆらゆら揺れていたシルバーのリングじゃなくなってただのシルバーのキラキラ光ってる丸いピアスになっていた。



『久しぶり花』



聴き慣れた声にご飯が通らなくなった。
なんか前と雰囲気が違う感じもする。

『…花、?』


どうしたんですか先輩、お久しぶりですね。
空先輩の目を見てそう言いたいのに、何故かずっと見てられなくて喉がつっかえて声が出てこないのだ。



『空、何しにきたの?』


沈黙を破ったのは煇先輩で口調が少し苛立っているような気がした。


『…別に?飯食いに来ただけ〜』

『飯ないじゃん』

『あ、あと花にも会いに来た』


その言葉に反応しちゃってジミン先輩の方に向いてしまった。急に?どうして?沈めていた想いがちょっとした事で吹き上がってきそう。私が惚れた糸目の笑顔をしていて胸が高鳴った。