お兄ちゃんはもう車も出してくれていて、今日はお出かけといってもドライブするらしい。
〈おーい早くしろチビー〉
「分かってるー!ちょっと待って!」
玄関から私を呼ぶお兄ちゃんに適当に答えながら髪を少し巻く。
〈山姥が化けたな〉
「うるさいな」
車に乗ればすぐに出発した。
私だって女の子だ。おでかけとなれば少しはオシャレしたい。
お兄ちゃんは白Tに穴あきジーンズといつもとは珍しい格好だ。
「お兄ちゃんだって、今日いつもと違うね」
〈まぁ今日の夜は予定あるからな〉
「彼女?」
〈そんなとこ〉
照れると饒舌になるお兄ちゃんは信号が止まるまで変な豆知識聞かされた。日本の歯医者の数はコンビニの数よりも多いらしい。ほんとなのかな
「どこ行くの?」
〈んー決めてねえ〉
「無計画なの?」
〈いや?お前がいきたいところに今日は連れてく計画〉
元気なさそうだからなーと窓の外を眺めるお兄ちゃん。その開けた窓からは生ぬるい夏の匂いが入ってくる。
目を合わせないのはきっと、少し照れているからだろう。
「お兄ちゃんありがと」
〈ん〉
素直にそういうと、頭をガシガシかいてハンドルを持ち直した。いつもウザいけど、やさしい私のお兄ちゃんだ。悔しいけどイケメンだし
この前インスタで見たカフェに連れて行ってもらうことになった。
カフェに着けば若い子たちが結構いて、みんなの目を引くお兄ちゃんはやっぱりかっこいいらしい。
可愛いマカロンと私はカフェラテでお兄ちゃんはブラックコーヒーを注文した。
「お兄ちゃんってさ、やっぱモテるよね」
〈そうか?〉
「うん、だってみんな見てるよ」
〈まぁ今日は俺の魅力がでまくってる日だからな〉
「…まぁ、そう言うところみんな知らないもんね」
〈うるせ〉
デコピンされた、痛い。
「…嫌い…」
キッと睨むと〈すまんすまん笑〉って頭なでるから大人の余裕ウザい。
着色料と砂糖でいっぱいのマカロンを頬張る。
〈…女の子はそういうの好きだよな…〉
「お兄ちゃんの彼女も好きでしょ?」
〈いやそうでもない…俺の彼女は特殊だからな〉
「ふ〜ん」
〈俺の話はいいから。俺はお前の腫れた目について話がしたい〉
私の腫れた目を指してお兄ちゃんは真剣な顔をして言った。