目を覚めると夕焼けだった外は真っ暗になっていて時間は12時前。重たい頭とを少しあげて携帯を見ると2件ほどLINが来ていた。

煇先輩からだ。


"大丈夫?" "また、頼ってね"


先輩の優しさにどれほど助けられればいいのだろうか。先輩だって…辛いのに。



"大丈夫です、今日もすみません。ありがとうございました。"


それだけ送って今日はまた寝ることにした、明日が休みで本当によかった。何もかも忘れたい明日になって人生最初からになればいいのに。



目が覚めて自分の今の状態の汚さにびっくりする。


〈花起きろー〉


とノックもせずに入ってくる私の5つ年上の兄の水川春だ。


〈……お前、山姥みたいだぞ…〉

そんなヤバいみたいな顔しないでよ…ムカつくな…勝手に妹の部屋入ってきといて。


「うるさい、お兄ちゃんには関係ない」

また布団に潜ろうとすると掛け布団をベリっと剥がされてしまった。


〈風呂行け、風呂、汚い〉

「やだ、もう今日は何もしない!」

〈飯は?昨日食ってないだろ…〉

「食欲がないの…」

〈なんだ風邪か?体調悪いのか?誰かとケンカしたのか?〉

「本当に何もないよもう少し寝たいの」

〈嘘つけ、死んだ目しながら帰ってきてからそのままベットインして寝てただろ…まぁいいわ、とりあえず風呂だけは入れまじで〉



この人本当になんでこんなにもズケズケと入ってくるんだ……あとちょっとデリカシーないよね、思ってたけど。

なんで彼女いるのか全然わかんない…


無理矢理体を起こしてベットから降りようとすると、お兄ちゃんは私のおでこに触れて自分の体温と比べた。


〈え、おっ、おい…お前本当に大丈夫か?〉

「へ…」

勝手に出てきた涙。ポロポロと落ちて止めようと思っても止まらない。なんでだろ
 


〈……今日俺とどっか行くか?〉



親指で涙を拭ってそう聞くお兄ちゃんの笑顔は悔しいけどかっこいいのだ。



「……」

〈なんでも買ってあげるぞ?〉

「なんでも…」

〈しかもなんでも食わせてやる〉

「う、うん…それは、いきたいかも…」

何でも買ってあげると言われすぐに釣られる私は本当にチョロい。

〈そうとなれば決まりだな〉 


ニッと笑うお兄ちゃんは今の私にとってすごく救世主だった。

お兄ちゃんなりに私を心配してくれてたのか。

パンパンに腫れた目を見て何も思わなかったのもそういうことなのかな。

デリカシーないとか言ってごめんね、お兄ちゃん



メンタルがやられてるから、お風呂上がった後にバスタオルとか普段出されてないのに用意してあったり

部屋に戻ればぐちゃぐちゃだったベッドも綺麗に整えられていて、そう言う些細な優しさにも涙が出そうになる。いつから私はこんなにも弱くなってしまったのだろうか。


悲しい思いを胸の隅っこに、久々のお兄ちゃんとのお出かけだからワクワクはしていてお気に入りのスカートを履いてメイクも軽くする事にした。


腫れてる目を冷やして治すの、すごく大変だったけど。




携帯を見ると煇先輩から

"また、会って話がしたい。"

とLINが送られていた。返信はまた今日帰ってきてからすることにした。今は昨日の事を忘れていたい