週末の夕方
珍しく西が終業時間間近に事務所に戻ってきていた。
「西さんめっずらしーい。残業ですか??」
と相田が事務所内の電化製品などの電源をオフにしながら問いかけた。
「西さん、残業されるならポットの電源抜かずにおきましょうか?」と真亜子が言うと、真亜子の顔を見ながら西が頭をポリポリとかいている。
「飯でもいくか?」
飯でもいくか?聞き慣れない言葉すぎて真亜子が止まっていると、ハイテンション相田が「行きまーす!」と挙手した。
「よし、喜多も行くぞ。」
と西は真亜子の返事を待たずに号令をかけた。
(どういう風の吹き回しですか。)と真亜子が戸惑っていると、その雰囲気を感じた西が
「日頃色々と事務処理手伝ってもらってる感謝と、こないだ忘れ物届けてくれたお礼を兼ねてだよ。」
と付け加える。
「それは、私の仕事です。」
と真亜子が不審げに答えると、相田が「真面目か。」と突っ込んだ。

「喜多ぁ、お前何食べたい?」
大体の質問には相田が先に答えるというルーティンが自然とできているのかもしれない。
やはり相田が「わたしはぁー」と話し始めると西が遮った。
「相田に聞いてねえよ。」
「えー、ひどくないですか、私だって西さんの書類作成したりしてるじゃないですか。」
「相田は彼氏とこの辺の飯屋は制覇してんでしょうが。」
「そうですけどぉ」
…そういえば、と真亜子は歩速を緩めた。
(この辺りに新しく創作和食ができたってこの間TVで…)
「西さん、ここがいいです。創作和食。」
真亜子の言葉に少し前を歩いていた二人が戻ってきた。
「おう、こんなとこに和食屋あったか?」
西は腰を屈めて扉の中を伺った。
「最近できたようです。」
「よーし、んじゃ、ここにするか。」
と、西は表に出ている手書きのメニュー看板を早速読んでいる。相田は店の外観の写真を撮影している。
真亜子は扉を開き「3人ですが、席空いてますか?」と確認した。