そんなことを思い出しつつ、二人でふふふと笑い合っていると、杏里が口を開いた。

「いやー、でも、本当に良かった。麗奈が報われない恋をするのはなんか嫌だったんだよね。フラれたらもう殴り込みに行こうと思ってたもん。『うちの麗奈の何があかんのやぁ!?』って」

まさかの暴露をした杏里に、浮かべた笑みが微妙に引きつっているのを自覚しながら、内心で「よ、良かった」と思う。

そう思っていると、「あ」と彼女が何かを思い出したように声をあげた。

「それにしても、ずっと惚気聞かせてて悪いかなぁ……って思ってたけど、これからは心置きなく言えるね!」

「え……?」

「あ、麗奈も言っていいんだよ!」

そう言って喜色満面、という様子で私に言う杏里に、私は少し逡巡してからにこーっ、っと笑みを深めた。

「……じゃあ、そうだね。今まで、私に相手がいない間もずーっと散々聞かせて貰って(・・・)いたから、私もお・も・う・ぞ・ん・ぶ・ん、聞いて貰おうかなぁ?」

「れ、麗奈。なんか、顔が怖いよ。ちょ、ちょ、ちょっと待って」

「……どうしたの、杏里? そんなこと言わずに聞いてよぉ」

「ね?」と言って微笑む私。

杏里が引き攣った顔で「れ、麗奈ぁーー!?」と叫んだ声が校舎に響いていった。