扉の近くにあるボタンを押し、電気をつけてみると、やはり中にいたのは高坂だった。

顔をあまり上げず、視線を合わせない彼は、どこかばつの悪そうな様子で。

けれど、自分のことでいっぱいいっぱいだったため、そんな彼の様子を気にする余裕が無かった。

(落ちてたよって……伝えなきゃ)

私は、声が変にならないよう細心の注意を払いつつ、袋を差し出す。

「これ、落ちてたよ。高坂の、じゃない?」

そう声をかけると、ばっと顔を上げた高坂は、私の持つ袋を見て一瞬目を見開いた。

「なんで……」

ボソッと呟かれた声は、私まで届かない。

私は突然固まってしまった高坂を不審に思い、声を掛けた。

「……高坂? どうしたの」

「超カッコ悪いじゃん、俺……」

今度は、私の耳が高坂の声を拾う。

そう言って下を向いてしまった彼に、困惑する私。

どういう意味なのか分からず、尋ねようとすると、高坂が顔を上げた。

「……麗奈、なんで今年バレンタインくれなかったの?」