「お願いね」

申し訳なさそうな顔で私を図書室から送り出した先生。

……いやこちらこそ二人揃って職務放棄しちゃってごめんなさい。

そう思いながら、私は図書室を後にして校内探索へ乗り出した。

「ここにもいない……」

自教室、他クラスの教室、彼の部活の部室……手当たり次第に探してみても見当たらない。

目撃情報は聞くのに見つからないとは、入れ違いにでもなっているのだろうか。

「一旦図書室に戻ろうかな……」

全然見つからない高坂を探すことを諦め、図書室へと踵をかえす。

校内を軽く一周した時、それを見つけた。

「……?」

それは、ちょうど私の教室から図書館までの廊下、柱の影になって見えづらいところに落ちていた。

淡い黄色のリボンで飾ってある、シンプルな青いラッピング袋。

手のひらサイズのそれを屈んで拾う。

中身は見えないが、裏返すと端に小さく「高坂」と書かれていたことで全てを察した。

(バレンタインチョコだな、これ)

沢山貰っていたから、一つ鞄からこぼれ落ちていても気付かなかったのだろう。

……いや、もしかすると。

彼は気付いて。今探しているのは、これなのかもしれない。