「よう、久し振りじゃねぇか」

「さっちゃん……」

「どうだった?結局、あれからこんなに長く生きやがってよぉ、へっへっへっ」

「えぇ……あれからも色々あったけど……楽しかったわ。あなたにお礼がずっと言いたかったのよ」

「ふんっ。何のお礼だ?生きるのを選んだのはてめぇ自身だろうが。良くも悪くも自分の意思でここまで生きてきたんだよ」

「……それでも、選ぶ事を教えてくれたわ」

 彼女はあの時のように暗く沈んだ表情ではなく、何も思い残すことがないような吹っ切れて良い顔をしている。

「まぁ、それでも人生終わりは必ずくる。最後に良かったと感じてるか?」

「えぇ……あの時、生きる事を選んで良かったわ。良い事も悪い事も含めて……」

「なら良いさ。私がてめぇの所に来た理由は分かってるよな?」

「はい。今度こそ、本当のお迎えですね」

「そうだよ。私の本当の仕事って奴さ。へっへっへっ」

 さっちゃんはそう言いすっと彼女へ手を差し伸べる。強く握ると壊れてしまうんじゃないかと思えるくらいに白く透き通って見えるさっちゃんの掌。彼女はにこりと微笑むと、さっちゃんの差し出す手をそっと握った。

「お疲れさん。てめぇは幸せもんだよ」

 駆けつけた家族に見守られる中、彼女は静かに息を引き取った。彼女が幸せだったのかは誰にも分からない。さっちゃんにも。しかし、最後に吹っ切れたような良い顔をしていただけでも良しとしよう。