「あなたがまだ赤ん坊の頃、離宮の裏にある森で、獣化したリシュタルト様をご覧になられたことがあると言われてましたよね?」
ええ、とナタリアは背首した。
ナタリアが前世の記憶を取り戻した日のことだ。
「そのとき、実は私もその場にいたのですよ。茂みの中に隠れていましたが」
「そうなの? まったくわからなかったわ。でもどうして茂みの中なんかにいたの?」
「憎き異母兄の命を狙っていたのですよ」
こともなげに、恐ろしいことを言うギル。
「お父様の命を?」
「ええ。あの頃の私は、獣化能力を奪った兄のことを心から憎んでいました。兄の政権を崩壊させようとたくらんでいたダスティンの口車に乗せられていたのもその頃です。そして兄がときどきあの場所にひとりで赴くという情報を耳にして、暗殺のために潜んでいました」
「でも、あなたはお父様を暗殺しなかったわ」
「ええ。茂みの中から、あなたを見たからですよ。その瞬間、兄への怨恨はどうでもよくなりました」
「え、私?」
ナタリアは、キョトンとした顔で自らを指さす。
するとギルは、「まだ分かりませんか?」といささか不満げな顔をする。
ええ、とナタリアは背首した。
ナタリアが前世の記憶を取り戻した日のことだ。
「そのとき、実は私もその場にいたのですよ。茂みの中に隠れていましたが」
「そうなの? まったくわからなかったわ。でもどうして茂みの中なんかにいたの?」
「憎き異母兄の命を狙っていたのですよ」
こともなげに、恐ろしいことを言うギル。
「お父様の命を?」
「ええ。あの頃の私は、獣化能力を奪った兄のことを心から憎んでいました。兄の政権を崩壊させようとたくらんでいたダスティンの口車に乗せられていたのもその頃です。そして兄がときどきあの場所にひとりで赴くという情報を耳にして、暗殺のために潜んでいました」
「でも、あなたはお父様を暗殺しなかったわ」
「ええ。茂みの中から、あなたを見たからですよ。その瞬間、兄への怨恨はどうでもよくなりました」
「え、私?」
ナタリアは、キョトンとした顔で自らを指さす。
するとギルは、「まだ分かりませんか?」といささか不満げな顔をする。