家庭教師のギルではなく、リシュタルトの異母弟クライドとしての彼とこうして話すのは初めてだった。

聞きたいことはたくさんあったが、ナタリアは開口一番、もっとも気になっていたことを尋ねることにする。

「あの、ギル。ギルは呪いをかけられて、だから獣化できなくなっていたのよね」

「ええ、そうです。リシュタルト様は、このことは知らなかったようですけどね。彼の配下の者たちが、勝手にやったことのようですから」

「でも、どうしてあのとき急に呪いが解けたの? 特別なことをしたわけじゃないのに」

「私もあのときは驚きましたよ。まさか、長年私を苦しめていた呪いが解けるとは夢にも思っていませんでしたから」

ギルが、バイオレットの瞳を細めナタリアに向けて微笑んだ。

銀髪の彼はやはり見慣れないけど、悪くない。

改めてまじまじ見ると、血がつながっているだけあって、どこかしらリシュタルトに似ている気もする。

「きっと、あなたをお守りしたい一心で、無意識のうちに自ら呪いを解いたんでしょうね。あなたは私にとって、獣人としての本能を呼び覚ましてくれる特別な存在ですから」

「どういうこと?」

ギルが何を言っているか分からず、ナタリアは首を傾げる。