夕食前に、ナタリアはようやくリシュタルトから解放された。

ユキの餌を用意しに厨房に向かっていると、何やら玄関ホールが騒がしい。

見ると、アリスが大勢の衛兵に取り囲まれていた。

「離して! 私が何をしたって言うのよ!」

「殿下の食事に薬を混ぜた罪です。裏付けは取れてます、大人しくついてきてください」

「番である私が、レオン様にそんなことをするわけがないでしょう!」

(アリス、捕まっちゃった……)

暴れながら衛兵たちに連行されていくアリスを、ナタリアは信じられない気持ちで見つめていた。

リシュタルトを亡き者にしようとしたダスティンの処分を決める一方で、レオン獰猛化事件の捜査も密かに続けられていた。

アリスと仲の良い侍女が、レオン獰猛化事件の前日、暗黒街で異国の商人から猛毒らしきものを買っていたという目撃証言があったという噂話をアビーが話していたが、本当だったようだ。 

その異国の商人は、獣操に関わる薬を違法に販売していることで有名らしい。

(このシーン、知ってる……)

衛兵たちに羽交い絞めにされ、あることないことを罵倒しながら引きずられていくアリスの姿に、ナタリアは焦り覚えた。

モフ番のラスト、ナタリアが投獄されるシーンにそっくりだったからである。