肩の傷が開き血を流し続けているリシュタルトも今にも意識を手放しそうだが、ナタリアを抱く腕の力を緩める兆しはない。
ギルが、もう一度獣人の姿に戻る。
そしてナタリアを見ると、「驚かれましたか?」と聞いてきた。
「驚いたも何も……」
どこから整理したらいいのか分からない。
とにかく分かったのは、ギルが味方だということ。
そして自分のことを大切に思っているということだけだった。
「まさか、お前の正体がクライドだったとはな。呪いで髪色と瞳の色が変わっていたのか」
言葉を失っていると、リシュタルトの声がした。
淡々として、冷たい語調。
いつもの彼の声のようにも聞こえるし、そうでないようにも聞こえる。
感情の読み取れないリシュタルト――異母兄に、ギルが複雑な視線を向ける。
するとリシュタルトは少しだけ口の端を上げて、金の瞳に穏やかな色を灯した。
「とりあえず、心からお前に礼を言う。お前が生きていてくれてよかった――クライド」
ギルが、驚いたようにバイオレットの瞳を見開く。
それから彼は息を呑むと、泣いているような笑い方をした。
いつもどこかしら影のある笑い方をするギルが、ナタリアの前で初めて少年のような純粋な笑みを浮かべた瞬間だった。
ギルが、もう一度獣人の姿に戻る。
そしてナタリアを見ると、「驚かれましたか?」と聞いてきた。
「驚いたも何も……」
どこから整理したらいいのか分からない。
とにかく分かったのは、ギルが味方だということ。
そして自分のことを大切に思っているということだけだった。
「まさか、お前の正体がクライドだったとはな。呪いで髪色と瞳の色が変わっていたのか」
言葉を失っていると、リシュタルトの声がした。
淡々として、冷たい語調。
いつもの彼の声のようにも聞こえるし、そうでないようにも聞こえる。
感情の読み取れないリシュタルト――異母兄に、ギルが複雑な視線を向ける。
するとリシュタルトは少しだけ口の端を上げて、金の瞳に穏やかな色を灯した。
「とりあえず、心からお前に礼を言う。お前が生きていてくれてよかった――クライド」
ギルが、驚いたようにバイオレットの瞳を見開く。
それから彼は息を呑むと、泣いているような笑い方をした。
いつもどこかしら影のある笑い方をするギルが、ナタリアの前で初めて少年のような純粋な笑みを浮かべた瞬間だった。