「悪いのは悪用した編集長でしょ。来てくれて本当にありがとう」

「峯野さん、ちょっと良いですか?」


中からさっきの婦警さんが出てきた。彩響の前に近づいた彼女が腰を落として彩響の状況を確認した。


「体はどうですか?」

「あっちこっち痛いです」

「病院に行った方がいいかと思いますけど…。こちらの方は保護者さまですか?」

「いいえ、違います。会社の部下です」

「承知しました。こちらの方は重要参考人としていろいろと質問されるかと思いますので、どなたか峯野さんの保護者さまを呼んでいただけますか?」

「保護者、ですか…?」

「そうです。まだご結婚されてませんね?ご両親とかでも結構ですが…」


(お母さんを呼ぶ?レイプされそうになったと、お母さんに言えと…?)


―なに、彩響。だから言ったでしょう、短いパンツ履いちゃダメだって。お母さんの言うこと聞かなかったからそんなことされても文句言えないわ。

―あなたがなんか刺激するような行動をしたんでしょう?

―女は男に自分から気をつけなきゃいけないって、何回も言ったでしょう。

―で、やられたの?やられてないでしょう?だったら大騒ぎしないで。

―全部あなたのせいよ。あなたが悪いから、文句言わないで。


「…ダメです!母は絶対呼びません…!」


思わず大声を出してしまった。婦警を含め、そこにいた人が全員こっちを見る。その痛い視線を感じながらも、彩響は何度も顔を振った。


「呼べません、無理です」

「…なら、誰でも良いですのでとりあえず呼びください。友人でも結構です」