「掃除も、洗濯も、料理も、女性がやるのではなく、人間なら誰でも自分自身のためにやるべきことでしょう。実際男の俺は家政夫で、女性であるあなたはそんな俺を雇う雇い主様です。そのような愚かな言葉は俺には通用しませんので、心配無用です」


自分の意見はあまり言わない人かと思ったのに、予想外だった。彩響はなんか照れくさくなり、視線をそらした。4人の中では一番静かな人かと思ったが、もしかしたら実際はそうではないかもしれない。


「えーっと、紹介はこんな感じにして…私は今から仕事に行ってきますので」

「土曜日ですが、出勤ですか?」

「そうです。昨日終電に間に合わなさそうで仕事残して来たから、これから片付けに行かないと」

「…承知しました。なら、俺も今から仕事を始めますので」


三和さんは玄関まで付いて来た。彩響は靴を履きながら話を続けた。


「いや…初日ですし、無理しなくて大丈夫ですよ」

「峯野様はお仕事なのに、俺一人でのんびりするなど、ありえません。さっそく業務を始めます」

「あの、さっきからずっと気になってましたけど…」

靴を履き終え、彩響は三和さんの顔を見上げ話を切り出した。これからどれくらい同じ空間で生活するようになるかは分からないが、なにかしら気になる部分があるなら、その場ではっきり話し合って解決した方がいいと思う。これは長年社会生活をやってきての経験だ。


「そこまでかしこまらなくていいから。「様」とか付けるのやめて貰えません?実際私より年上でしょ?」

「いいえ、峯野様は俺にとって雇用主様なので。そのような無礼な言動は控えるべきです」