「俺…いや、私は父の影響で青森でクリーニング屋をやってました。その他の家事全般できます。私を雇ってくれませんか？」

「はるばる青森から東京まで、か。なにかここで仕事を探している理由があるのかね？」

「詳しく話すと長くなりますが…事故で父から譲ってもらったお店をなくしました。それを取り戻したいです。東京では私でも出来る仕事があると思い、出て来ました」


切実な思いが伝わったのか、Ｍｒ．Ｐｉｎｋがゆっくり頷いた。気まずい時間が流れる間、寛一は何回も固唾を呑んで返事を待った。

やがて、Ｍｒ．Ｐｉｎｋが口を開いた。


「残念ながら、今から別のミーティングが入っているんだ。悪いが、又改めてここに来てくれるかい？」

「と言いますと…」

「今度はじっくり話そう。正式な面接の形で」

「…！ありがとうございます…！」

寛一はやっと笑えた。二人は握手をして、次回を約束した。




「入社してからは、もちろん又酷いお客さんもいましたが、結構楽になりました。成や皆にも仲良くしてもらったし、今は彩響さんの家でお世話になっていますので、これ以上の望みはありません。早くこのお店を復活させて、お世話になった人たちに恩返しがしたいです」


寛一さんの昔話はそこで終わった。父との思い出を失くしたくない、この店を取り戻したい…その気持ちが強く伝わってくる。彩響が彼の肩をとんとんと軽く叩いた。


「きっと大丈夫ですよ、寛一さんは誰より誠実で、立派な人ですから」

「ありがとうございます。彩響さんも、とても立派な方だと思います」

「良いよ、そんな照れくさい褒め言葉は。…で、結構いい時間になったけど…今日はどこで泊まりますか？」