「弁償の過程も結構大変で、めちゃくちゃ責められました。そして客によっては凄い金額を請求する場合もあって…でも何も文句言わずに言われるまま返しました。その服に関する思い出はお金で計算できるものではないと分かっていましたので。そうやってある程度片付けが終わって、稼ぐ方法を考えましたが、俺は昔から洗濯してミシン回すことしかできてない人間だったので…。自分に何ができるかを考えたら、家事を仕事にすればいいかと思い始めました」

「それで、Cinderella社に?」

「いいえ、最初は個人で仕事を探しました。でも男を家政夫として使ってくれる人は少なくて…悩んでいたとき、偶然今の会社の話を聞きました。それしか希望がないと思い、早速事務所を訪ねました」




そわそわしてソファーで待つのを約20分、事務所の外から物音がして、誰かが入ってきた。寛一はぱっと立ち上がった。

「お、君かね、待たせて申し訳ない」

入ってきたのは中年の男性だった。多少派手な格好をしていたが、今の寛一にはそれは重要事項ではなかった。


「私のことはMr.Pinkと呼んでくれ。で、用件は何かね?」

「その…御社では…男を雇ってますか?」


寛一の質問にMr.Pinkがにっこりと笑った。


「そうだね、雇っているよ。むしろ男だけを雇っている」

「え…どうしてですか?」

「さあ、私は色んな意味で悪趣味な部分があるんだよね。まあ、『より良い世界を作りたいから』くらいで答えておこう」


なんだか不思議な人だ…そう思いながらも、寛一はそれ以上は深入りせず引き続き自分の話をした。