お店、いやもうお店の痕跡はなに一つ残ってないその空間は、酷かったその日の痕跡をそのまま残していた。所々散らばっている家財道具や、洋服などもあったけど、それも半分以上焦げて本来の機能を失ったものばかりだった。割れた窓から差し込む薄い光だけを頼りに、彩響はその場をじっくりと見回った。
「…どうしてこんなことに…」
「火事の原因は結局未だに分かりません」
「寛一さんは?家事があった日は無事だったんですか?」
「俺は家で寝ていました。…ここにあったのはすべて燃えてしまったんですけど」
お店を出て、彼が何処かを指した。その指の先には、青い屋根の一軒家が見える。この近所で特に目立たない形の家だったが、彩響はすぐ彼の意図に気付いた。
「あれ、寛一さんの実家ですか?」
「正確には、『昔実家』でした。火事の後、預かっていたお客さんの洋服の弁償をしなくてはいけなかったので…財産になりそうなものはすべて処分する形になりましたね」
「そんなに??そんなに弁償するものが多かったんですか?」
「そうですね、丁度欲張ってネットでの全国受付サービスを開始した時だったので。事業自体はうまく進みましたが…その分、弁償する金額も跳ね上がりましたね」
弁償はなんとかしたけど、でもこの店まで復活させるのは無理だったーと彼が説明を続けた。これで彼がどうして東京に出たのか、どうして他の家政夫たちが「店」という単語にあんな反応を見せたのか、やっと分かった。寛一さんは、この店を復活させたくて東京に出たのだ。
「…どうしてこんなことに…」
「火事の原因は結局未だに分かりません」
「寛一さんは?家事があった日は無事だったんですか?」
「俺は家で寝ていました。…ここにあったのはすべて燃えてしまったんですけど」
お店を出て、彼が何処かを指した。その指の先には、青い屋根の一軒家が見える。この近所で特に目立たない形の家だったが、彩響はすぐ彼の意図に気付いた。
「あれ、寛一さんの実家ですか?」
「正確には、『昔実家』でした。火事の後、預かっていたお客さんの洋服の弁償をしなくてはいけなかったので…財産になりそうなものはすべて処分する形になりましたね」
「そんなに??そんなに弁償するものが多かったんですか?」
「そうですね、丁度欲張ってネットでの全国受付サービスを開始した時だったので。事業自体はうまく進みましたが…その分、弁償する金額も跳ね上がりましたね」
弁償はなんとかしたけど、でもこの店まで復活させるのは無理だったーと彼が説明を続けた。これで彼がどうして東京に出たのか、どうして他の家政夫たちが「店」という単語にあんな反応を見せたのか、やっと分かった。寛一さんは、この店を復活させたくて東京に出たのだ。