彩響はふと寛一さんが初めて家に来た日を思い出した。そういえば、彼は「休暇」が必要ないと言っていた。社会人なら誰もが望む有給を自分から拒むとは…。不思議に思う彩響にＭｒ．Ｐｉｎｋが話を続けた。


「こういう事情なので、君の方から彼を説得してくれないかい？彼は今の仕事を言い訳にしているので、直接君から言うと効果があるかと思うので」

「分かりました。…ちなみに、どうして寛一さん…いや三和さんは有給を拒むのですかね？」

「さあ、なにかの事情があるのだろう。私には分からないけどね」


Ｍｒ．Ｐｉｎｋは知らないと答えたけど、彩響は何故かそれがすぐ嘘だと分かった。きっと何かの事情があって、プライベートな部分だから黙っているのだろう。彩響も深く触れず答えた。

「はい、では家で三和さんとお話します」

「ありがとう。あ…又それとは別に、実は家政夫たちの方にも『勤務環境に関するアンケート』というものをお願いしていて、先週三和くんにも頼んであるが…」


「勤務環境に関するアンケート」というと、つまり自分に関する話だ。正直彼がどんな答えをしたのかすごく気になる。そわそわする彩響に気づいたのか、Ｍｒ．Ｐｉｎｋがにっこりと笑った。


「三和くんは、今の環境がとても気に入ったらしい。できるだけ長く、お仕事がしたい、と言ったよ。それに…」

「それに…？」

「ハニーがいつも無理しているようで、とても心配、とも書いていたよ」

「はあ…そんな、私は特に無理などしていません…」