「彩響さんがですか?いや、ゆっくり休んで頂いても…」

「いいの、私が久しぶりに行きたいだけです」

「承知しました」


…こうして二人並んでスーパーに来た訳だったが…

「……」

彩響は、カートに寄っ掛かり、洗剤コーナーの家政夫さんを見ていた。「ちょっと見てきます」と言っていたが、これは時間的にもう「ちょっと」ではない。彩響の目には全部「洗剤」という大きい括りに入るものだが、どうも彼には一つ一つが全く違うらしい。スーパーを一周して来てもそのままで、彩響が結局先に声をかけた。


「あの、なんか欲しいものあったら買っても良いですよ」

「…!いいえ、新商品が出たので見ていただけで…まだ家に残ってあります」

「そういえば洗剤って色んな種類があるって聞いたんですけど、なにが違うんですか?」


洗剤の話は大昔理央から聞いたことがある。漂白剤が入った洗剤を間違って使ってしまい、気に入った青いシャツをだめにしたとかなんとか… 正直洗剤の種類なんか全く興味ないが、一応相手のことを考え、質問してみる。

彩響の質問に寛一さんはとても嬉しそうな顔で、新しいおもちゃに遭遇した少年のように、瞳をキラキラしながら説明を始めた。


「洗剤にも様々な種類がありまして、ここではそこまで多い種類を扱ってはいませんが…こちらの商品は酸素系漂白剤で、こちらが塩素系の洗剤です」

「はあ…」

「塩素系と言いますと、効果は良いですが、服の生地を痛めたり、色物の場合色が落ちたりします。飲食店ではこれを薄めて雑巾などを消毒したりもしますが、俺は消毒が必要なものはなるべくこちらの酸素系で煮沸しています」

「煮沸…?茹でるってこと?雑巾を?」